豊島区、千川駅近くのわかしま内科のブログです。
新規の不眠症治療薬ベルソムラについてのトピックスも、私のブログではSGLT2阻害薬についての投稿とならんで、キーワード検索の数の多いものです。発売1週間ですので、実臨床で用いたときの限られた印象に止まりますが、1週間での印象を書いておきます。
マイスリーなどの超短時間作用型の睡眠薬に慣れている人には、ベルソムラのほうがその作用時間が長く感じるでしょう。ベルソムラは就寝の約30分前、翌朝の起床予定時刻の約7時間前に内服しておきたい薬です。マイスリーのように短時間作用型の薬ならば、夜更かしをしてしまって夜中遅くに薬を内服して直後に就寝することも可能ではあります。5時間あるいはそれ以下の少ない睡眠時間で翌朝起きるような、いわば「乱れた睡眠習慣のまま」でも翌朝の持ち越しを意識しないで使えます。それに対してベルソムラは、本来日本人で理想的とされる6〜7時間の睡眠をとるときにちょうどマッチする持続時間です。睡眠障害の背景にある「就寝時間が遅くなってしまった習慣」を修復しつつ、内服する薬と言えます。6〜7時間の睡眠をとるぶんには、中途覚醒もきたしずらいように感じます。ベルソムラは原則、内服治療歴のない初めて睡眠薬を内服する人に使う薬ですが、患者さんたちの知りたい情報であると思いますので、記載しておきます。
また、ベルソムラの成人への至適用量については、さまざまな疑問点が残ります。したがって、低用量から開始したく思っております。国内発売の15ミリ錠がややヨコ長な剤型、20ミリ錠が円型の錠剤なので、カットし易い15ミリを半分にすることも良いのではないかと思っています。吸湿性の錠剤のようですが、1、2日の保存には問題はなさそうです。
ブログで多くの人たちがベルソムラの情報を集められている背景には、ベンゾジアゼピンを内服すること、処方されること、への懐疑的な視点が背景にありそうです。ネット上では「ベンゾジアゼピンの依存」という言葉が非常に強調されています。「反ベンゾジアゼピン薬キャンペーン」のごとく全国紙のうちの一つが書いた内容がその起源と思われます。
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬を使いこなすうえでは、
持ち越し
記憶障害
奇異反応
筋弛緩作用
反跳性不眠
などが問題になりますが、適正な薬剤選択と、使用方法の留意点を明確にすることで、その大部分は対策ができます。
医師による不適切な薬剤選択や投与量の過量などは確かに問題となるケースがあると思います。そういう場合は、そのまま内服を継続することに問題はあると思います。ベンゾジアゼピンが悪いのではなく、処方医が悪いとしか言えません。
いっぽうで、少量のベンゾジアゼピン、非ベンゾジアゼピン薬が適正に用いられ、よい睡眠のコントロールが得られているときに、現状維持をすることも間違っていないというのが正しい説明と思われます。ベンゾジアゼピン内服の弊害を過度に強調するのも、正しくありません。
睡眠をとりまく生活習慣の改善が大切です。そのときに、6〜7時間の適正な睡眠時間の確保を前提としてベルソムラを用いることは、ひとつの良い選択には思われます。
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