豊島区、千川駅近くのわかしま内科のブログです。
10月に移転したわかしま内科ですが、新しくした検査機器として、超音波検査装置(心ドップラー、甲状腺、頸動脈の観察が可能)ともう一つが、動脈硬化の測定装置(フォルム™)、です。
両腕と両足首の4か所に血圧計のようなものを巻いて、同時に心臓から送り込まれる血流を検出します。それぞれで測定された圧力のデータと、心拍からの遅れ(タイミング)を測定して、
1)動脈硬化の進展度(つまりは血管の壁の硬さ)
2)動脈硬化がきたす下肢の血管の詰まり(狭窄)
の2つの要素を評価します。
動脈硬化を数量化して評価することの意義
生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常症など)での通院治療の目標は、それら疾患によって2次的に引き起こされる合併症の予防、その合併症の多くに影響する動脈硬化の進行の抑制にあります。区の住民検診で眼底検査が行なわれているのもこの目的です。
少し辛口かもしれませんが、区の健診での眼底検査については不足に感じることがあります。それはキースワグナー分類という手法での報告がなされるわけですが、KW 0 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ というステージで動脈硬化の進行度を表現します。学術的に明確な基準であるものの、残念ながら、評価者(多くは眼科医)によってさまざまにその評価軸が変化するのです。A眼科の先生は甘くて、B眼科の先生は辛口でキビシイ判定をする。これは同じ眼科に通院して長期的に比較するなら使えますが、ある年齢での一時点での評価としては、客観的に使えない。現実的にはとても欠点のある健診手段だと思います。
それよりは、わかしま内科で採用した動脈硬化の測定器、その測定値のほうが少しでも客観性が高いと思います。この測定器を所有する医療機関だけでしか行なえないわけですが。
生活習慣病での通院をされている患者さん。また、健診で眼底の動脈硬化の進行が指摘される患者さん。それらを中心に動脈硬化の測定器の検査を勧めていこうと考えています。半年から1年に1回測定して、複数年での変化を追うのがよいでしょう。
下肢の血管の詰まりを評価することの意義
この検査がもっとも活躍するのは、閉塞性動脈硬化症という病状が始まっている患者さんたち。タバコを吸う男性患者さんに多い病状です。
症状からみて、この病状が疑われるのは「間欠性跛行」(かんけつせいはこう)という症状がある患者さんたち。
間欠性跛行とは?
ある距離、そう長くない距離を歩いていると、やがて足が痛くなって歩けなくなる。そうなるとしばらくその場でたたずんで休むことになる。しばらく休んでいると痛みがとれてきて、また歩ける。しかし歩いているとまた痛くて立ち止まって休む。「間欠的に」「歩けなくなる」症状です。
この症状につながる病気は代表的なものとして2つ
整形の病気 腰椎脊柱管狭窄症 (この病状では血管の詰まりの検査結果はみられません)
背中を伸ばして立って歩いていると、背骨の変形のせいで足に行く神経が圧迫されて、痛くて歩けなくなります。圧迫が解除される姿勢、少し背中を丸めて休んでいると痛くなくなる。そのあとまた背中を伸ばして歩くと、痛みがくりかえす。
内科、血管外科の病気 閉塞性動脈硬化症
血管が詰まっていて、足に行く血液の量が減っています。その減っている血液の量で充分な酸素供給ができるとき、すなわち安静なときは痛みませんが、酸素不足に陥る足をたくさん使うときに、酸欠での筋肉の痛みがでます。下肢の血管の詰まりの評価、わかしま内科に新しく採用した機器で初期の段階から発見可能です。
今までは、わかしま内科では測定器がなく、病院にお願いしていましたが、もう当院で測定可能です。1回の検査費用も、この検査自体は3割負担で300円、1割負担なら100円ととても安価です。
間欠性跛行でお困りの患者さんは、整形の病気なのか、内科・血管外科の病気なのかをこの測定で区別して、受診先、紹介先を決めるとよいでしょう。