豊島区、千川駅近くのわかしま内科のブログです。
男性の尿に血液が混じるのは、膀胱癌などの重大な病気のサイン
40歳台の元プロボクサーのタレントさんが膀胱癌の闘病中であるとの報道。がんばってください、と励ましたいです。振返れば、松田優作が膀胱癌を患い亡くなったのが40歳でした。若い人もけっこう発病する病気なのですね。
わかしま内科でも、この10年で4例の膀胱癌の初発患者を発見しています。現時点で生存されている患者さんが3名、亡くなられたのが1名。偶然かもしれませんが当院では、いずれも60歳台の男性での発症です。腎臓や尿管の癌は女性でもみられましたが、膀胱癌はこれまで全員が男性でした。統計的にも男性の膀胱癌が女性の約4倍と言われており、年齢を含めて当院の状況はそれに合致します。喫煙者に多いとされています。タバコの発癌物質がめぐり廻って尿に排泄されるためと推察されます。非喫煙者では何かの発癌物質が職場等にあった可能性など、そういうことも論じられています。
膀胱癌患者の発見のきっかけとしては、肉眼的血尿、眼で見てそれとわかる血尿がいちばん多いです。血尿というと「赤い尿」のイメージですが「血液そのものに見える尿」のほか、「黒ずんだ尿」のこともあります。女性は膀胱炎などでも比較的頻繁に血尿になりますので、女性の血尿のすべてが癌疑いではありません。しかし、男性が膀胱炎などで血尿になることは極めて少なく、男性に一度でも肉眼的血尿がみられたら即精密検査の対象です。(女性の血尿についても癌などを否定する作業を行なっておくことが安心できる対応です。)
頻尿、排尿痛、残尿感などの泌尿器科疾患でしばしばみられる症状が理由で発見される膀胱癌もあるので、それらは注意深く対応しないと、診断を誤ります。
肉眼的血尿がみられる以前に少量の出血をしていることを健康診断などでの「尿潜血陽性」で指摘している可能性もあるわけで、その段階で2次検査、精密検査をしておけば早期発見にむすびつくのではないかと、普段の診療では考えています。できるだけ早期のうちの診断治療にむすびつけたいわけです。頻度が少ないことからすれば男性の尿潜血陽性は特に要注意。精密検査をしておくことをすすめます。
膀胱癌を単独の検査で100%早期に診断できる単一の手段は、なかなかありません。内視鏡で膀胱のなかを観察するのがもっとも優れると思いますが、泌尿器科を単独で標榜されているような専門のクリニックもしくは総合病院の泌尿器科に行かないと通常できません(多科を看板だけで謳っている専門性のないクリニックではだめです)。膀胱の内視鏡を受けるために直接に泌尿器科専門医に相談に行くのでないなら、わかしま内科でも相談可能です。
尿の検査としての細胞診検査、尿中の腫瘍マーカー、超音波検査(エコー)などがそれぞれ有用で、それらの2つ、もしくは3つ、を組み合わせることで診断率があがります。
なお、尿潜血について、2次検査、精密検査を希望されて来院されるときは、がまん可能な範囲で尿を溜めた状態で来院してください。超音波検査をするにしても、採尿するにしても、膀胱が空っぽだと、話がすすみません。