豊島区、千川駅近くのわかしま内科のブログです。
わかしま内科の仕事にはあまりならない話題なのですが、結構大事な話だと思うので。
「喫煙習慣の本質はニコチン依存症である。」これ、本当?
肺の病気や心臓の病気の専門家たちが作成した「禁煙治療のための標準手順書」の冒頭で、書かれている言葉ですが、どうなんでしょうか?
ニコチン依存症の患者を対象とした禁煙指導の際にニコチンパッチなどの禁煙補助剤を利用する方法が健康保険(3割自己負担)の対象となり、10割自費で払っていた時代より患者さんには安くなったのがおおよそ、8〜9年前です。医者たちにとっては新しい保険診療の分野が創設されたということで、禁煙外来(正確にはニコチン依存症外来)を謳う医療機関がたくさん発生、タケノコのような状況です。わかしま内科はある種の理由から、行なわずに居ます。必要な患者さんには信頼のおける池袋の医療機関を紹介しています。
今日のブログタイトルの発端は、有名な証券ストラテジー・アナリストのコラムを読んだことに始まります。
広木隆の「新潮流」第114回 タバコ
いわく、タバコをやめようと決めたら、スパッとやめることができた。タバコは3日間もやめたらニコチンが身体からぬけて、禁断症状など出ない。タバコを止められないのは(誤った)習慣になっているだけであった。
広木さんはこの考え方、禁煙法をある人の説として聞いて実行した、それで禁煙できた、とおっしゃっています。たぶん、私が下で紹介する名古屋の先生の説く禁煙方法なのだと推察します。
ニコチン依存症について格別の知識を持つわけではありませんが、私が疑問を呈するのは喫煙者の大半がニコチン依存症でありそれを解決できるのはニコチンパッチなどの禁煙補助剤だけ、と言いたそうな「禁煙治療のための標準手順書」の書き方です。多くの禁煙外来を謳う医療機関は「ニコチン依存症管理料」という医療費を来院された喫煙者について算定し請求することを目指しています。ニコチン依存症という病名を診断する条件については問診票によるテストの結果と、タバコの1日本数と喫煙年数を掛け算した値が200を越えることと、2つがあげられています。このテストの結果と数字200以上の条件の両方を満たせば合格で保険扱い、満たさなければ不合格でニコチンパッチなどを希望するとしても全額自己負担。医療機関にとっては「ニコチン依存症管理料」という比較的高額な医療費を計算できないので、あまりよい稼ぎにはなりません。
広木さんは、この健康保険適応になった年から「禁煙指導が商売になった」のである、と書かれています。さすがに日本をリードする証券アナリスト、適切に(言い過ぎもせずに)指摘されました。あえて言い過ぎをするなら、タケノコ医療機関の商売になったということであり、禁煙補助剤の会社(テレビで啓発CMを流しているのは禁煙補助剤チャンピックスの発売元ファイザー製薬)の商売になったということであり、あるいは製薬会社から利益供与を受けるようなニコチン依存症の専門家たちの商売になったということかもしれません。
診断基準に合致するニコチン依存症の日本人はたしかに居るのでしょう。しかし、本数と年数を掛け算して200に達する以前の若い喫煙者の対策が放置されていませんか?禁煙補助剤はそれなりの効果はあるのでしょう。使わなかったときに比べて禁煙補助剤を使うと、長期の禁煙継続率が1ないし3倍くらいアップすると学者たちは述べています。でも、失敗する人が居なくなるわけではありません。失敗する人、再喫煙に至る人、と成功者とを隔てるのは何なのか?そのことに興味をもたない医療関係者は「ダメよ、ダメダメ」です。
最後に大切なこと。
リセット禁煙のすすめ
おそらく、広木さんが聞いた禁煙法は名古屋の磯村毅先生がもう10年にわたって説かれているリセット禁煙の方法だと推察します。グーグル等で検索してみてください。磯村先生を招いた池袋保健所の講演会企画を7、8年前に私が設定したことがあり、一度だけ面識があります。また、私の手元には古くなった「リセット禁煙のすすめ」の小さな本が今もあります。一気に読めば1日で読めるかもしれません。本が読むのが苦手なら磯村先生はすでにマンガ版のリセット禁煙本も用意してくれています。
読み易い1冊の本、1冊のマンガ本に、<タバコとの怪しい蜜月関係を断ち切る>ための思考方法が記述されています。<喫煙を続けたい、あるいは将来再喫煙をしたくなるのは今までのあなたのチョッと間違ったタバコへの想いが原因、そのリセットが先にできれば禁煙は成功します>という禁煙法であって、禁煙補助剤の処方は本質ではないという立場です。リセット禁煙の本の帯にはこの本を読むまで「まだ禁煙するな!」と書かれています。禁煙失敗の原因を残したまま禁煙すると苦しむだけだからまだ禁煙しないでこの本を読んでね、ということです。この本を読まれてから、禁煙外来に行くかどうか判断されると本当は良いと思います。
リセット禁煙は本を買うお金はかかりますが、健康保険の費用も自費診療の費用もかかりません。禁煙補助剤の内服も必要ないかもしれません。商売にならない禁煙法ですから、磯村先生は演者として製薬会社主催、共催の講演会などに招かれることもないようです。
ブログを書いてから、豊島区と禁煙のキーワードで検索をしてみたら、豊島区公式ホームページに「禁煙成功の秘訣」というページがありました。いつのまにか、磯村先生の講演の延長線上で保健所関係のかたが作ってくれたようです。保健所さんに拍手しておきましょう。
禁煙成功の秘訣ー豊島区ホームページ
2015年7月に気づきましたが、上のリンク、リンク切れになっています。豊島区、保健所は禁煙の支援を止めてしまったみたいです。タケノコのように発生した禁煙外来クリニックに任せればそれで良い、とでも思っているのでしょうかね?ああ、残念、残念、です。