豊島区、千川駅近くのわかしま内科のブログです。

ベルソムラの発売は、2014年の11月下旬に予定されています。あと1週間ですね。

私がベルソムラに期待している理由をもう少しブログに書きます。

睡眠と覚醒。24時間の間に毎日繰り返されるリズムを調整している複数の脳内伝達物質のネットワーク、その中核となっているのが覚醒作用物質オレキシンとわかったのは近年のことです。オレキシンの受容体拮抗薬ベルソムラは、覚醒させるシグナルが増加してしまった不眠症の患者で、本来の健全な眠りをもたらす新規治療薬として大きな期待がもたれています。

従来の睡眠薬のほとんどは、脳および末梢の神経細胞の活動を抑える作用をもつ物質であって、その抑制の結果として睡眠に導いていました。そのことは、睡眠薬が示し易い副作用、翌朝の認知機能の低下であったり、筋弛緩作用による転倒の増加などの原因にもなっていました。眠り以外の脳神経系の機能にも影響があったということになります。

一方、ベルソムラは、覚醒をもたらすオレキシンの作用を弱めることで、眠りをもたらす薬剤ですから、その他の脳神経系の機能を抑制することは見られていません。その特徴はめだったものです。今後、患者に提供できる不眠症(睡眠障害)治療の選択肢として、理解し精通すべき薬剤と考えています。

ベルソムラは原発性不眠症の治療薬として、ひとまず臨床で使われ始めます。しかし、睡眠と覚醒のパターンが障害されることは、うつ病であったり神経症であったり、さまざまな病状に合併します。おそらくは脳内にあるさまざまな神経ネットワークのはたらきの変調が「眠れない脳」の原因になっているのだと推測します。脳全体に対して健全に作用する治療手段が望ましく、それが求められる方向と考えます。合併症をもった患者の不眠症治療の本当の最良の選択肢が何なのか、科学的な探求がされていく必要があります。