今日2020.07.17現在で新型コロナの抗体検査について、まとめを一度します。学者とディスカッションするためのものというよりは、現時点で私が使用しているロシュの抗体検査キットを測定される患者さんと「共通認識」をつくるのが目的です。

6月まで日本で出回った各種抗体キットについては、その正当性の検証がなされていない。抗体はできれば感染を体験した患者をもれなく指摘してほしい。いっぽうで感染していなかった人を誤診してしまう可能性が低いものであるべきだ。抗体がもしも、患者の今、急性期の診断にもちいることができるなら(そうではないのだけど)、もれなく指摘できることが重要。しかし、抗体は、過去の感染の証明であるのだから感染してなかった人を誤診するキットではこまる。5月までにいち早く出回っていたキットは、誤診、偽陽性をすくなからず含んでおり、多くの住民を検査するのには適切ではなかった。東京都民ですら、ここまでで100人に一人くらいしか新型コロナにかかっていないことを考えるととても、罪深い誤診だが、平気でそれを行ってきた医療機関があった。

現在使っているロシュのキットについては、偽陽性は考えなくてよい。全部の新型コロナ感染者の半分弱から半分強を陽性として教えてくれるキットである。すこし曖昧な確率を言っているが、「たくさんの軽症もしくは無症状者」を含むような集団では、半分弱と、発熱から重症化まで「まぎれもない新型コロナ病」だった集団では、半分強と説明しておく。

ロシュの抗体が検出されるのは、新型コロナ感染症のいったい「いつ」から「いつ」までなのか?詳細はデータが増えれば増えるほど、これからわかってくること。PCRを上気道(鼻咽頭擦過もしくは唾液採取)から見つけられる時期はロシュ抗体はまだ見られないだろう。その後の時期からしばらく数ヶ月は見られるらしいが今後の検討課題。ロシュの抗体は中和抗体(病原体をブロックする善玉抗体)を多く含むようである。だからこのロシュ抗体が充分にあるなら、人に移さない状態(すでにPCR陽性ではなくなった状態)であり、新しく移されもしない状態(また新型コロナがからだに入ってきても抗体がすぐに撃墜してくれる状態)と考えて良さそうだ。

以上、こういった特性で十分だとしたら、あえて、それよりも高額でかつ優れた特性の抗体を測定すること、併用すること、などは考えなくてよいだろう。

どこか不足があるか?他の抗体が優れる可能性があるか?アボットの抗体は?少し価格が高い。優れる特性を見出せるかどうか、検討中。非常に興味を持っている児玉の抗体は?IgM IgG に峻別して、量的な判断も加えられるので、より分析的に、かつ時間を追って、くりかえし評価をするのには役立つだろう。7月末以降の導入を計画中である。