豊島区、千川駅近くのわかしま内科のブログです。
昨日、マイクロアレイ血液検査について、問い合わせの電話があったので、その内容を含めて少し補足。
1)癌になりやすい体質や不確定な予想、「リスクを知らせる検査」を私は好まない。マイクロアレイ血液検査はたとえそれが早期であっても「癌ができていること」を診断する検査です。
大手検査業者Aは、アミノインデックスという検査を私たちに紹介している。マイクロアレイ血液検査よりも安い2万円前後で行なわれているようです。ライバルの大手検査業者Bは最近別の検査を私に紹介してきました。それも「わかしま内科ではちょっと採用しずらい」検査です。散見される自費医療を収入源とする院長、経営者は取捨選択もせずに、来院される皆さんに何でも平気で「売って」いますが。。。そもそも、その違いがわかっていないようにも見えます。
癌の体質やリスクの検査が持っている危うさ、問題点を以下のような例で示してみます。ある検査が「将来あなたが30%の確率で癌になること」を教えてくれたらあなたは何をしますか? また、別のある検査が「将来あなたが他の人の3倍癌になりやすいこと」を教えてくれたらあなたは何ができますか?
まず問題なのは、癌になりやすいと指摘されたところで、効果が明確な対策「じゃこれを行なってください。これを行なえば癌になりやすいリスクは減らすことができるのです」という方法がないこと。科学的に証明された実際に効果がある癌の予防薬、予防方法は2015年の時点ではありません。証拠のない対策を効果があるかのように見せかたビジネスもあるようですが、そういうものを「売る」ことはわかしま内科ではできません。
それから、30%の確率で癌になることを知らせると例えてみましたが、多くのリスク検査はそこまで高いリスクを知らせているわけではないのです。百歩譲って30%の確率で癌になることを知られてくれるとーっても有り難い検査だとしても。。。。それは70%の人は癌にならない、ということを意味する訳です。そういった検査でリスクを知らされて、あなたはどう生きますか?いつもいつも「自分は癌になりやすい」と言いながら一生を過ごして、癌にならないで死ぬ。。。。。それは不利益ではありませんか?癌のリスク検査は過半数の人にとって癌の「なるなる詐欺」のようなものだと、そう思いませんか?必要なレベルを超えて一生癌を恐れ、いつか癌がやって来るといって、自分の不幸だけを想定して毎日を生きる、そういうのがあなたの目指す人生だったら、よその自費医療機関でリスクの評価をして対応してもらってください。営利を目的にしていない私にはそういう患者さんとつきあってる時間はありません。
もういちどだけ、マイクロアレイ血液検査の特徴を述べます。私が知る限り、マイクロアレイ血液検査は2015年の現在ただ一つ運用されている「消化器癌の早期診断検査」です。体質やリスクの検査といったばくぜんとした検査とは全く異なる性格のものです。同様の癌早期診断を目指した遺伝子検査の開発が数十億の国費をつぎ込んで2014年からがんセンターなどで始まったようです。しかし、その成績の発表も実用化のメドもまだまだ先のことです。
2)マイクロアレイ血液検査は消化器癌全体をカバーできないのか?食道癌での成績は?
次は昨日、電話があった問い合わせへの答えです。マイクロアレイ血液検査は、金沢大学を中心とした医療機関に有効性の検証をしてもらってるエビデンス(証拠)の確立した検査です。証拠がない分野での有用性は標榜していません。
マイクロアレイ血液検査は、胃癌・大腸癌・膵癌・胆道癌について、その癌の場所を含めて指摘します。はっきりしていることは他の手段、すなわち現状での検査である内視鏡検査やCT、MRIなどでそれら4つの癌の診断がなされた人ではそのほぼ全員で、癌の存在、その4つの臓器の特定まで含めてマイクロアレイ血液検査がもらさず診断していること。
食道癌についての成績はまだ検討した症例数が多くないために、食道癌と臓器を特定する診断方法として証拠が充分とはいえない。というのがキュービクス社からの回答です。
キュービクスからのメールを引用します。
以前にこの検査でがん陽性判定により「精密検査が必要」ただし、胃癌・大腸がん、膵癌、胆道がんすべてで陽性となったため「場所は不明」として結果報告をした症例があり、すぐに都内の◯◯病院で上部内視鏡を施行したところ1cmの食道がんが見つかって、内視鏡治療だけで治癒切除できた症例がございます。また、この患者様の手記が昨年10月に週刊文春に掲載されました。
こう言った、癌の所在部位を明確にできなかった陽性のなかに食道癌など、他の部位の癌への反応が含まれることなどが想定されますが、しかし多数例でのエビデンス(証拠)が集積されたわけではない。だから、キュービクス社は食道癌での有用性は標榜するに至っていないのです。問い合わせへの回答として充分でしょうか?おそらくは多数例の検査結果の情報が蓄積されたときに、食道癌を特定するに足る判定方法、こういう遺伝子パターンが見られたときは、他の消化器癌ではなくて、まさに食道癌の診断なのだと、そういう時代がやってくるのだと予想します。
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