豊島区、千川駅近くのわかしま内科のブログです。

百日咳は春から秋、特に夏の8、9月に増える病気です。今年の夏の終わりに咳の長引く患者さまが少し多かった印象です。何割かが百日咳であったのでは、と感じています。百日咳を起こす病原体は、百日咳菌のほか、バラ百日咳菌などもありますが、比率からすると百日咳菌がずっと多いです。

大人の百日咳が増えている理由

百日咳の予防には予防接種がたいへん役にたちますが、その効果は10年以上は持続しません。現在日本では乳児に対して3種混合ワクチン(DTPワクチン)が行なわれていますが、その接種スケジュールは1歳すぎまでに終了するのが一般的です。したがって、それから10年を経た時期、中学生以降の日本人は、百日咳感染のリスクをかかえている状況です。実際、小児の百日咳がワクチン接種者によって大幅に減少しているのに対して、青年・成人の百日咳の流行がしばしば問題となっています。

また、成人の百日咳は小児ほどには典型的な症状にならず、また軽症であることも多く、咳が長引いているという点を除くと臨床症状からは百日咳に病名を絞り込むことができません。百日咳と診断されないままに終わってしまうケースも多くなります。

百日咳は、現在は小児期の予防接種の効果がきれてしまった大人から大人にうつる病気になっているわけです。そして、時にまだ予防接種の効果が出ていない(予防接種前の)ベビーに感染してしまうことも問題になっています。

百日咳の診断は結構むずかしい

百日咳の診断についてです。百日咳に感染しているまさにそのときに検査物をとって菌の培養をすると診断できそうですが、そこが簡単な菌ではありません。鼻腔や咽頭を綿棒で拭って、それを培養に出す場合、他の菌と別に百日咳専用の培地を必要とすること、5から7日の培養期間を要すること、成人の百日咳では感染している菌の量が少ないこと、その他の理由から百日咳の症例の90%くらいは培養による診断は出来ないとされており臨床では用いられる手法ではないのが現状です。

一般的には、百日咳の抗体検査(採血検査)を用います。EIA法で測定した百日咳のPT−IgG抗体の値が咳などの症状が始まって2〜3週間以降に上昇します。単独の測定で100EU/ml以上であれば最近の百日咳感染と診断することが一般的です。しかし、この百日咳抗体での診断も発症早期には診断確定にむすびつかず、結構困難なこともあります。

詳細は、咳嗽に関するガイドライン 第2版 2012年 日本呼吸器学会

もしくは

http://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/146.html

を参照してください。

百日咳の治療

最後に、百日咳の治療についてです。マクロライド系抗生剤の投与が有効です。クラリスロマイシンの常用量7ないし10日の投与、アジスロマイシンの常用量3ないし5日の投与が、同等に有効であるとされています。ただし、現時点でアジスロマイシンは「百日咳」の病名での保険適応がありません。