豊島区、千川駅近くのわかしま内科のブログです。
前回に続いてマイクロアレイ血液検査について。
研究開発者のアカデミックな説明はリンクで読まれてください。
私のブログは、一般の患者さんたちへの説明ですから、たとえを使って上のタイトルのように表現しました。
消化器癌のなかでも、膵癌はその早期発見が難しく、診断後の手術など治療を受けても成績が悪い。救命率も低い。そのことは坂東三津五郎さんの逝去の報道などで一般にも知られるようになっていますね。医者たちも先日ブログに書いたように、「膵癌になったら運が悪かったと諦めてくれ」的な発言になりがちです。
膵癌の診断と、その一方での治療成績の悪さ。その理由は無症状の段階での早期診断のよりどころが、乏しいこと。消化器医である私はもう30年近く腹部エコー検査というスクリーニング検査のスキルを積み重ねてきましたが、小さい膵臓の腫瘍を見つけたといっても、1センチくらいの大きさかな。病院や検診医療機関の大型検査機器、CTやMRI、PETなどを用いて検診やドックを行なったところで、より小さい、より早期の膵癌が検出可能かと言うとそれも困難と考えます。検診やドックの腫瘍マーカー血液検査もまた、有用性が低いのです。
「膵癌になったら諦めてくれ」という診療所のドクターはむしろ正直だと思います。検診施設やドックの経営者は、膵癌のように、検診等では早期発見できない癌があることを積極的には明示し広告したりはしません。経営者は検診ビジネスの限界をみずから口にはしない。PETなどは特に高額の機器です。10万円程度かそれ以上の自費検査代金で購入コストを償却する毎日なのだと推測します。
エコーやそれよりも高度とされる画像診断に頼っても、無症状の膵癌の早期発見は難しい。さりとて、健康人に入院を必要とし身体的にも負担の大きい、そういう精密検査を癌検診の一次検査として提案することはできません。
マイクロアレイ血液検査について
マイクロアレイ血液検査は、消化器の癌についてはその有効性がすでに確認されている、医学的なエビデンス(証拠)の確立した遺伝子レベルの血液検査です。原理を考えると他の癌にも応用できそうですが、エビデンスが確立していない現状では、その点は開発段階です。
マイクロアレイ血液検査は血液がささやく、確かな「癌の目撃証言」
タイトルの言葉を再度、ここに上げました。画像診断で見つける癌の早期発見よりも、ずっと早期に癌を見つけることを今から説明します。
私たちの血液には赤血球、白血球、血小板など、いろいろな細胞が含まれていて、全身を循環しています。その白血球のなかに単核球という種類の細胞があります。単核球の機能の一つとして癌の免疫にも関与しています。単核球は、癌細胞に対して様々な反応を起こすのですが、血液中の単核球が示す癌への反応を遺伝子レベルで分析するのがマイクロアレイ血液検査になります。
あなたの(私の)からだにまだ検診でみつからない、症状もない膵癌があったとします。その微小の膵癌の脇にも血液は循環しています。血液に乗って膵癌のすぐ脇を通過した単核球は、そこで目撃した膵癌について認知します。そして大声ではないかもしれないけど、ささやき始めます。
「ボク見たんだ。今通ったところに小さいけど膵癌があったんだ!ほんとだよ。聞いてよ。あったんだよ!」それは小さい声だから、あなたの耳には聞こえません。でも単核球君は、ささやいているんです。膵癌の診断、まだなの?、ボク見たのに。。。。と。(なんだかブログを書いていて、NHKのためしてガッテンの脚本書きをしているかのような心境になりました) 小さいな声に耳をかすのか、聞こえないままにするのがいいか? 科学の進歩がもたらした新しい診断手段とどうつきあうのか、皆さんといっしょに考えないといけません。
単核球は、目撃した癌の種類、それが膵癌なのか、胃癌なのか、大腸癌なのか、それを含めてささやくようです。血液の遺伝子情報を解析すると、それぞれの癌で異なった結果、ささやきが聞こえるとのこと。
前回のブログの内容の再掲になりますが
現在の医学的手法(内視鏡、CT他の画像診断など)で胃癌、大腸癌、膵癌、と診断がされた患者では、全員(100%)がアレイ検査(+)。
すなわち、現在の医学的検査での3つの癌の診断にアレイ検査が劣る可能性はゼロ。むしろ、それよりも早いタイミングでの癌の診断発見をアレイ検査には期待できる。
一方で、現在の他の医学的手法で胃癌、大腸癌、膵癌、の診断がされていない患者では、その87%がアレイ検査(ー)。
このことの意味は、3つの癌の診断に至る可能性のない非癌患者をアレイ検査(+)として不安にさせる頻度は少ないということ。
マイクロアレイ検査は予約が必要ですが、1回の来院、少量の採血だけで実施が可能
現時点で、城北地区の内科医療機関では、病院を含めて当院わかしま内科が唯一の実施施設です。将来はこういった検査のメリットについて普及し、さらに多くの医療機関で実施可能になるとよいですね。
残念ですが、自費での遺伝子検査です。保険が使えません。自費ですから、検査を受けるかたが納得できれば、その価格は自由に設定できます。さりとて、必要以上に高い価格に設定して「良さげ」に見せて宣伝することはしません。そうやってマイクロアレイ検査で私が儲けることもまた、導入の目的ではないのです。
血液は採血が済んだら、北陸金沢まで搬送し検査を行なってもらいます。検査を行なうキュービクス社には、私は高額の検査代金と消費税8%を払わないといけません。検査結果の説明もしますし、カルテも作り診察券も作ります。必要な連絡もする必要があります。さまざまな手間がありますが、検査を安価に提供するためにギリギリの決定をしないといけません。(キュービクス社への支払い額は来院された患者さんには正直に伝えますね)
マイクロアレイ血液検査の費用は、税込み68000円と表示してスタートします。(通院中の患者さんにはもう少しディスカウントするかもしれません)
マイクロアレイ血液検査についての他院ドクターからの紹介を歓迎します
患者様ご自身に、わかしま内科への電話予約(03-5964-8100)を勧めてください。他院ドクターからの紹介であることがわかれば、患者様は必ず貴院へお返しします。
また、巷間いろいろと癌のなりやすさ、癌になりやすい体質、などを診断するという遺伝子検査が流行し始め、かつビジネスになりそうだということで、それらを実施する「儲け優先」の医療機関が散見されます。わかしま内科が採用したマイクロアレイ血液検査は曖昧な「癌のなりやすさ」を示すような、根拠と検査後の対策が不明瞭な好ましくない遺伝子検査とは一線を画しています。マイクロアレイ血液検査は、今まさに癌ができていて早期の診断と治療が必要なことを指摘する検査です。このブログを見て、「でも、もう少し安い検査を受けよう」などと不良な検査を受けるかたが出ませんことを願い、最後に記載します。
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- マイクロアレイ血液検査, 千川, 癌の早期発見, 膵癌, 豊島区
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