豊島区、千川駅近くのわかしま内科のブログです。

なかなか痩せられない太めの糖尿病患者さんにはSGLT2阻害薬もよい選択です。

今年の4月以降に5種類のブランド名で発売された新しい糖尿病治療薬の一群です。各製薬会社は営業上の必要から各薬剤間の優劣を語ろうとしますが、現時点で明らかな証拠にもとづいた優劣比較はできないと思いますので、これらはひとまとめに扱います。

この薬剤の特徴は今までに試みられなかった新しい糖尿病の改善の機序にあります。糖尿病で起こっている高血糖状態を改善する方策は従来は2とおり。

口から入るカロリー量を制限する、あるいは同じカロリー数を接種するなら「血糖が上がりずらいように」上手に食べて上手に吸収する。食事の工夫ですね。

からだで燃やす、消費するカロリー量を増やす。運動習慣などでの直接的な燃焼アップ、筋肉量を増やして安静時のカロリー消費を増やす。内臓脂肪は同じインスリン量があっても肝臓や筋肉などでの燃焼を悪くするので、痩せることが大切ですが、いままでこれが難しかったわけです。インスリン抵抗性改善薬はこのエネルギー消費を改善するための投薬でした。

カロリーの入ってくる量を減らすか、カロリーを燃やすのを増やすしかない。この状況のもと、SGLT2阻害薬が登場。新しい作用機序は「カロリーを糖のまま、尿に出してしまう。尿にたくさんの糖を逃がすことで血糖(血液中の糖)を減らす、下げる」という作用です。ある意味画期的です。

尿に糖が出るのは糖尿病の結果であって、病気の本質でもなければ原因でもありません。大量の糖が尿に出て、弊害はないのか?どうもないらしいのです。ないらしい、というのは、今までの研究では、尿の糖が増えても、そのことで糖尿病自体に悪影響を与えたり腎臓などの臓器が害される事実は示されていないからです。一時、日本の研究者がこの薬を作り始めたときに、一度は開発の継続を見送りました。尿の糖を増やすことの安全性、有用性に自信をもてずに、一度、開発を中断したとのことです。でも、このアイデアは、海外の研究者、製薬企業がその後もこだわりつづけ、結局海外での発売が先になりました。日本の開発者たちも再度戻ってきて、国内開発の薬も発売になりました。(日本の研究開発にありそうな話ですね。)

SGLT2阻害薬を用いた糖尿病患者は、1日200カロリー程度の糖を尿に捨てるようになります。1ヶ月でその30倍だから、約6000カロリー。内臓脂肪でいうと6000カロリーは約1キロに相当する。ということで、今まで、体重が横ばいだった糖尿病患者は、月に1キロずつ体重が減ります。それ以上のペースで体重が減る患者さまは、おそらくこの投薬をきっかけに体重をウォッチするようになり食事にも気をつけるようになって、この薬の効果以上に体重が減るのでしょう。リバウンドしたり、体重が減らなくなる患者さまでは、また、200カロリー分同等かそれ以上の食事摂取が上乗せされる食生活に戻ったのが原因であることが多いように思います。

1日200カロリーのダイエットを実現してくれる新しい薬剤です。たくさんの患者ではありませんが、とても役立っています。200カロリーでは追いつかない、ひどい(というと失礼ですが)過食の患者さまではそれほど役に立たないのかとも思います。そこは、患者の協力があっての治療ですね。