豊島区、千川駅近くのわかしま内科のブログです。

糖尿病治療も新しい治療方法が取り入れられています。

2型糖尿病(大人になってから発症する糖尿病の大多数は2型、まれにインスリン治療が必須の1型糖尿病があります)について。

生まれもって親から引き継いだ素質「糖尿病のなりやすさ」と、過食や運動不足を中心とした生活習慣のひずみ「糖尿病の悪化因子」が単独もしくは重複して血糖が高くなるのが糖尿病です。糖尿病という言葉からすると、糖が尿に出てくることから話が始まるように聞こえますが、本質は血液中の糖(グルコース)が高いことであって、糖尿はその結果でしかありません。

血糖の高い状態は、全身でさまざまな異常をきたします。血糖の高い状態のもとでは、からだを構成するタンパク質に糖が結合して切り離すことが困難になります(糖化タンパクの形成)。糖化タンパクは、構造としても機能としても病的なタンパクです。糖化タンパクへの変性の積み重ねが糖尿病患者の晩年の合併症の原因になります。比較的若年でも起こる脳梗塞・心筋梗塞(心血管イベント)、老後の腎不全(人工透析)、視力障害(網膜症)、神経障害(シビレなどの症状や足先の壊疽)などはいずれも高血糖が持続した結果の合併症です。

2000年前の糖尿病治療の薬剤というと、「インスリン分泌刺激薬」という言葉でまとめられる薬が中心でした。上で「糖尿病のなりやすさ」と表現した「インスリンホルモン(血糖を下げるホルモン)の不足」を是正する薬剤です。たしかに血糖をさげますが、いくつかの欠点があります。生活習慣のひずみを解決しないまま「インスリン分泌刺激薬」でインスリン分泌を増やす治療だけを行なっていると、増えたインスリンは、血液中の糖分を体内にしまい込む作用を持っていますから、結果体重を増やします。また、インスリン分泌刺激薬の効果の出方によっては、空腹の時間帯に血糖が下がりすぎる「低血糖」を起こしてしまいます。低血糖は「お腹が空いた!!」という自覚の原因になり、結果としては治療が原因でかえって過食の傾向を増すことにもなります。また、「低血糖」自身の臓器への悪影響も知られています。

2000年から2010年には、「糖尿病の悪化因子」の改善作用が有る複数の薬剤も一般的に使われるようになりました。それらを「インスリン抵抗性改善薬」というのですが、過食や運動不足などの悪い生活習慣の是正などとともに、「インスリン抵抗性改善薬」を利用することは、多くの患者さまの糖尿病治療の質を改善してきました。

2010年代になり、さらに新しい薬剤、DPPー4阻害薬、また、今年2014年にはSGLT2阻害薬など、有用な薬剤も使われるようになりました。DPPー4阻害薬はインスリン分泌を増やしますが、低血糖を起こしずらいという特徴をもった薬剤で、低血糖を避ける必要性のたかい高齢者の治療薬としてたいへん優れた特性を持っています。また、今年発売されたSGLT2阻害薬は体重減少効果が明瞭であるという特徴を持った糖尿病治療薬です。それらの治療薬を上手に使い分けることのできるドクターが、糖尿病患者のよい主治医になると思います。